2007年05月27日

船乗りクプクプの冒険

 
 初めて読んだのは10歳の時です。
 こないだ、本屋に寄った時に見かけ、懐かしくなり思わず買ってしまいました。

 タローという少年が東京に住んでいたのです。
 タローは、宿題をやるのが嫌で、小説を読み出します。
 その本のタイトルは「船乗りクプクプの冒険」といいます。書いた人は「キタ・モリオ」です。
 海が好きなタローが、いわゆる「タイトル買い」してしまった本で、これから初めてワクワクしながらページをめくると、なんと最初の2ページしか書かれていない。しかも文章もヘタクソ。
 なんぼめくっても、白紙が続くだけ。
 そのずぅーっと後に、あとがきがあるだけ。
 あとがきには「ノートとして使え」とか、意味不明なことが。
 なんだこれ?と、タローが思った時に、めまいがします。
 気がつくと、なんとも砂浜に立つ小さい少年になってしまっているじゃないですか。
 タローはヌボーという大男に「さあ行こう、クプクプ」と声をかけられ、話をし、そこで初めて自分は本の世界のクプクプになってしまっているということを知るわけです。東京に戻りたいと思いながらの船の旅が始まりました。
 そして、キタ・モリオがこの世界に逃げ込んでいるということも、しばらくして知ります。タローもといクプクプは、キタ・モリオに会ってなんとか自分を元の世界に戻してもらおうと考えるわけです。

 薄い本ですし、小学校の時には何日かかかりましたが、今ならほんの数時間で読むことができるわけです。
 年月を感じましたねぇ。

 私は北杜夫の他の本を読んだことはないのですが、ユーモアを出しコミカルに仕上げるために、わざとカタカナをふんだんに使い、解りやすくしているところがとても読んでいて面白く、今でこそよくありますが、自分自身をパロディにするというセンスもたまらないです。懐かしかったです。

 私の「ファンタジー」と理解した読書の原体験はコレかなと思います。
 もちろん、それ以前にも色々と本は読んでいますが、「異世界」とかを意識しながら読んだのは、この本が初めてです。
 「現代」に住む平凡な少年が「異世界」に行くという、今大流行なスタイル、私の中ではその源流なわけなんです。
 そして今見ると一番すごいと思ったのは、昭和37年の7月に刊行されたのですよ。
 その時にこんなユーモラスなファンタジーを書いた著者は実にステキだと思いました。
 今のファンタジーブーム、そのレトロな日本版。
 ちょっと読んでみても良いかと思いますよ。

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BookData
 集英社文庫
 著者:北杜夫
 本体価格:381円 (税込400円)
 出版社:集英社
 サイズ:文庫
 ページ数:216p
 発行年月:1977年06月
 ISBN:9784087500301
posted by さざなみ at 11:32| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【本】フィクション(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月21日

大人のための怪奇掌篇




 私は、いわゆる短編小説が好きなのです。
 これはきっと、愛読しているホルヘ・ルイス・ボルヘスの影響がとても強いと思います。
 倉橋由美子さんの本は実に初めて読んだのですが、大人のための残酷童話とか、新訳・星の王子様とかを書いた方のようです。
 それはまたおいおい読むかもしれないとして、この「掌篇」は、20の短編がつまっております。
 第一夜から第二十夜まで。
 夜にひとつひとつと読み進めていくのが正しい形なのかも?
 私は地下鉄の中で、ひとつずつ読んでました。
 地下鉄に乗っている時間は12分。それでひとつ読めてしまいます。
 内容は、ちょっとコワイお話。
 ファンタジーではなく、現代における、ちょっと幻想的なお話です。
 こんな人が、ひっそりといて、こっそりとなにかをしているかも...?という感じ。
 話はストンと入っていく感じで、素直な作りのモノがほとんどで、惨劇的なものではなく、ジワジワときます。
 個人的には、各短編のラスト1ページでちょっとしたビックリ感を味わいたかったかなと思いますが、なかなか全篇楽しむことができました。
 
 ちょっと話は変わりますが、私は基本的に日本人の作家さんは読むに耐えないことが多くて、読後感がよろしくないことがほとんどです。
 村上龍の「半島を出でよ」とか宮部みゆきの「模倣犯」は、全く面白味が感じられず、激しく読後感が悪かった。きっと私の感覚がどこか他の人と違っていたのでしょう。好きな日本人の作家さんは司馬遼太郎さんとかです。主に海外の翻訳物を読んでおります。

 なので、日本人の作家さんは、必ず10ページ近く立ち読みしてから買うことにしています。
 それだけ合わない文体の人が多くて、疑心暗鬼っぽくなっているということです。
 ところが倉橋さんの文体は、とても上品でリズム感があり読むのに苦痛を感じることはありませんでした。
 好きな作家さん、というか、好みの作家さんの文体に出会った時には、いつも文章の後ろに、なにか静かなピアノソナタが流れるようなリズム感を感じるのですが、これも同じように波長があったようです。
 音もなく降る晩夏の霧雨のような、静かでしっとりとした、それでいて少し熱のある文章です。
 めったに文体の波長が合う作家さんには出会わないので、これは嬉しい。
 今度はこの人の本を一通り読破しよう。
 ...と思ったら。
 2005年の6月に他界されていました。
 実に惜しい方を亡くしました。

 いや本当に。
 この方の作品に注目していこうと思います。

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BookData
 著者:倉橋由美子
 本体価格:1,600円(税込1,680円)送料別
 出版社:宝島社
 サイズ:単行本/220p
 発行年月:2006年02月
 『倉橋由美子の怪奇掌篇』改題書
 ISBN:4796650970
 By.楽天ブックス
posted by さざなみ at 22:57| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【本】フィクション(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月14日

たのしいムーミン一家

 


 ひさしぶりにこういうのが読みたくなり、買ってしまいました。
 オムニバス形式なんですね。
 ムーミン達が長い冬の冬眠から目覚め、春を謳歌しだします。
 おさびし山に行ってみたり、海に行きニョロニョロの島へを上陸したり、全てがマイペースで楽しそう。
 そんな小さいお話の積み重ねです。
 だけども、話の最初の頃におさびし山で拾った帽子。それは、飛行鬼のシルクハットだったのです。
 ムーミンとスナフキンは、そのことが常に頭のはしに残っている状態。
 飛行鬼という強大な未知の存在への不安。
 ジワリジワリと迫ってくるような感じです。
 だけども、トフスランとビフスランとスーツケース、そしてモランが去った後...?
 
 児童文学としては、翻訳モノということで読みにくさはあるかなとは思います。
 ただ、日本人の書くものは、「未知なる想像力豊かなモノ」をあまり見受けないので、読んでいてワクワクしないのです。「知っているモノをこねくり回している」感じというか。
 そういう意味では、子供の想像力をかき立てる良い読み物だと思います。
 想像力豊かな子供になってほしいなぁ。
====
BookData
 講談社青い鳥文庫
 著者:トーベ・ヤンソン /山室静
 本体価格:580円(税込609円)送料別
 出版社:講談社
 サイズ:新書/261p
 発行年月:1980年11月
 ISBN:4061470442
 By.楽天ブックス
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2005年06月15日

グリックの冒険

グリックの冒険.jpg
 最近、再び犬を飼いだしたので、「動物もの」をよく読んでいます。
 これを買ったのは結構前なのですが、それでもたまーに掘り出して読んでいたりします。

 ジャンルは、いわゆる児童文学でして、その中でも名作と呼ばれるものだと思われます。
 主人公のグリックは、人の家で飼われているシマリスです。
 小屋の中で意味のない運動をする退屈な日々。
 そんなとき、通りすがりの伝書鳩のピッポーと会話することで、北の森への望郷の念を抱き、駆けだしていくのです。
 それはもう、長い長い旅となるのです。
 小さなシマリスの視点で描かれる日本は、こんなにも大きかったのですね!
 
 これを読むと、懐かしい気分がじわっと湧いてくるのですよね。
 大人も、大人じゃない人にも、オススメです。

 でも、一番読んでほしいのは、なにか心に自信を失っている人。
 グリックの冒険は、失っていた勇気を思い出させるに十分なものなのです。
posted by さざなみ at 23:35| ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 【本】フィクション(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月06日

半島を出よ 上巻

半島を出よ_上.jpg

 実はー。村上龍を読むのは初めてです。
 評判が良かったので手をつけてみました。
 
 この小説はフィクションです。でも、舞台は日本。
 2010年という近未来。経済破綻し、銀行封鎖、失業によるホームレスの増加、消費税の大幅引き上げなど、世界から取り残されつつある落日の日本が舞台です。
 そんな日本において、北朝鮮は相も変わらず危険な国でして、極秘事項を遂行するために日本に出向く精鋭の工作員達。
 一方、イシハラグループと呼ばれる危険思想や犯罪歴のあるドロップアウトした少年達。
 そして、工作員達により踊らされる政府のお偉いさん。
 上巻では、これらの登場人物の紹介をしながら事件が起こっていきます。
 用意周到に準備をかけ、唐突に始まり、そしてなすすべなく。同時刻を3方向から描いているので、分量の割には時間が進んでいないです。
 日本は平和な国なのね。痛みを知らない国なのね。
 そして痛みに慣れている北朝鮮って、やはり異常です。心が麻痺してます。
 なかなかにリアリティのある、「ありえそうな」未来。
 非常にタイムリーな小説だと思います。売れるのは納得。

 興味深いのは、北朝鮮の人たちの考え方。
 国として、あまりにも資源が少なく、飢えた生活をしていることに、日本に来てから圧倒されつつ意識していくのがなるほどと納得。
 ティッシュで口をぬぐい絹のようだと感動してたり、紅茶を知らずに淹れかたを間違えてみたり。ジーンズが「アメリカズボン」でとても高級だったり、スニーカーを履いて羽のように軽い靴だと感動していたり、Tシャツを着て肌へのあたりが良すぎて「母に抱きしめられているようだ」と言っていたり。
 ジョークを受け取れない朴訥さと、教育による洗脳。
 きっとかなりの取材を重ねているのだろうなぁ。すごいリアル。

 ちょっと読んでいてアレだなと思ったところは。
 最初の「登場人物」を見て、あまりの多さに読む気を失いかけたのは私だけではあるまい。そんな気が。
 下巻はこれから読むのですが、上巻においては「読者への啓蒙」が先に立ちすぎてます。
 「このままじゃ日本ダメになるって!皆でしっかりしようよ!」と、データを出して必死に訴えかけていると、ボンヤリ思ったり。
 ある程度、職業ごとに人物の行動がデフォルメされているなぁとは思うのですが、やりすぎは今ひとつ現実感を欠くというものです。
 もう少し、そのあたりを内に秘めた個性を出した書き方でも良かったのではないかな。

 書き口の手法としては、情緒的ではなく実務的な堅い雰囲気がありますねぇ。
 少しスピード感のあるドキュメンタリーにも似ている書き口です。
 嫌いではないですが、好みとは違います。
 でも、それでも読ませてしまうのは、やはり実力だと思います。
 なにせ、冒頭と上巻の最後の書き口が非常に上手い。
 私はどんな本でも買う前にまず3〜5ページ立ち読みするのですよ。
 そこでその後に期待を持てる本なら購入するのです。
 ノブエという世捨て人(用はホームレス)とタテノ少年の会話。発現するタテノ少年の異常性。これはイシハラのところに寄せなきゃダメだなと、タテノ少年は福岡へと旅をしてたどり着きます。
 結局、店頭で1章を読んでしまったのですが、吸い寄せられるように福岡(九州)に集まり、これから何かが起こるのを期待させるすばらしい「冒頭」でした。
 つなげるのが上手い作家さんなのかな。
 上巻で村上氏の個人的メッセージは8割方発露されていると見受けられるので、下巻はきっとフィクションとして楽しく読めるのではないかと期待してます。

 ちなみに、冒頭で一番好きな出だしは、かの「リング」です。
 疾走感があり、飲み込まれるような緊張感。
 あれは素晴らしかった。後の「らせん」とかが無ければ、より一層。

 ...ところで。
 このイシハラグループとかノブエさんなどは、なぜにカタカナ表記なんでしょうか?
 他の作品を読んでいないので、そのあたりが理解できず。
 そういう作風?

 下巻を読むのは、多分来月あたり。
 ちょっと別方面に出費がかさみました。本にお金かけられないやー。
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Book Data etc.
 価格:1890(税込)
 発行:幻冬舎
 ISBN:434400759X
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posted by さざなみ at 22:31| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 【本】フィクション(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月07日

石垣りん詩集

石垣りん詩集.jpg

 小説じゃないのですが、このカテゴリにしてみました。
 石垣りんさんの詩集でございます。
 昨年2004年12月26日亡くなられました。84歳だったそうです。
 この人の詩は、学校の教科書で日本人ならほぼ全員(?)お目にかかっているはず。
 私も「シジミ」「表札」を習った(読んだ)記憶があります。
 
 日本の詩人の中では、石垣りんさんが一番好きなのです。
 生活に根ざしたリアルな視点で、実直に誰にでも解る言葉で物事を表していて、子供ながらにそれが伝わってきた覚えがありますね。
 今大人になってから読むと、その時とは違った面持ちがあります。
 あのときはボンヤリとした考えることの無かった「死」についての覚悟がこんなにも如実に表現されていたのですね。
 それはこの人が生きていた時代によるものも大きいのかもしれません(原爆投下された後の日本。ビキニ諸島で原爆投下実験がされたり、そんな時代です)。

 私たちはただ紡がれたそれをそのまま受け入れていく。
 それでよいのかと思います。

 では最後に、詩をひとつ引用しつつ。


原子童話

 二つの国から飛び立った飛行機は
 同時刻に敵国上へ原子爆弾を落としました
 
 二つの国は壊滅しました

 生き残った者は世界中に
 二機の乗組員だけになりました

 彼らがどんなにかなしく
 またむつまじく暮らしたか−−−−

 それは、ひょっとすると
 新しい神話になるかも知れません。
 
(1949/9) 詩集「私の前にある鍋とお釜と燃える火と」より

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Book Data etc.
 価格:714円(税込)
 著:石垣 りん
 編集:粕谷 栄市
 発行:角川春樹事務所(ハルキ文庫)
 ISBN:4-89456-413-0
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 もっと知りたくなった人はコチラ〜
 たむ・たむのページさんより
  きんめず・ぶっくれびゅうさんより
posted by さざなみ at 14:58| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【本】フィクション(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年03月14日

私が愛した金正日

image/ripplets-2005-03-14T20:55:20-1.jpg

ようやく読む気になりました。
序章読了:これが本当なら、金正日、マジでヤヴァイ人ですなぁ。
第一章読了:まずは日本的企業体質と、せっぱ詰まっているらしき北朝鮮の両者が伺えます。読者に予備知識を与えるための章って感じです。
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Book Data etc.
 価格:1680円(税込)
 作者:落合 信彦
 ISBN:4334924476
 公式ページBy.Amazon
posted by さざなみ at 20:55| ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 【本】フィクション(小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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